ほろにがカプチーノ書庫☆entrep?t☆


ムーンマジック 1



ムーンマジック

月の綺麗な夜、琴子は1人入江家のキッチンに立っている。
コーヒーを飲むのは自分ひとりだけど、とても丁寧にコーヒーを淹れる。
周囲に香ばしいコーヒーの香りがたちまち広がる。

出してあるマグカップは二つ。一つにはたっぷりの砂糖とミルク、
もう1つはブラック。

「入江くんに飲んでもらいたいな。」

甘いコーヒーを一口含みながら、窓の向こうに輝く月を見上げる。
なんだか願いをかなえてくれそうな輝きを放って、漆黒の夜空に
たたずんでいるお月様。

「お月様、夢でいいから入江くんの近くに行かせてください。」
つい、手を合わせて。目を閉じて強く強くお願いしてみる。

「こんなこと言ってるの聞かれたら『バーカ』とか、言われるんだろうな‥」


☆☆☆

「ただいま」

誰もいないマンションにはその声にこたえる人はいないのだけど、
突然、嵐のようにやってきて帰って行った琴子の残像が部屋の
あちこちに残っているだけに、つい帰宅を告げる一言が出てしまう。

直樹はリビングに資料や本がたくさん詰まった鞄を置くと、
コーヒーを飲むためにキッチンへ入る。
戸棚には琴子が買ったかわいいマグカップが置いてある。

‥琴子の淹れたコーヒーが飲みたいな‥

疲れた手は先日挽いたばかりのコーヒー豆ではなく、
インスタントコーヒーの瓶に伸びる。
ポットに水を注ぎ、IHヒーターに置きスイッチを入れる。
乾いた機械音がキューンとなり水が騒がしく振動する。
程なく熱湯となり、インスタントコーヒーを入れるべく、
琴子のマグカップを手に取った。

?何か中に入っている感覚。
「なんだ?」覗き込むとそこには小さい何かが丸まって寝ている。

「あいつ、こんなところに懲りずに人形でも入れたか?」と指でつまんでみると、妙にずっしりする。
そして温かい。近づけてよく見ると、‥琴子だ‥。

!!!!

2008年08月14日(木) 23時51分46秒 イタkiss何でも書いてみように投稿、公開


2へ続く





?
inserted by FC2 system